焦げは水に浸けて待てば落ちる。そう覚えた矢先、土鍋にだけは絶対にやってはいけないと知りました。片付けの順番と、土鍋との付き合い方の話です。
土釜ごはんや台所道具など、毎日を少し楽しく心地よくする暮らしのヒントを届けます
焦げ跡と目が合った朝
前の晩に使ったフライパンの底に、焦げ跡が残っているのに気づきました。ゴシゴシこすろうかと一瞬手が伸びたのですが、ふと「これ、順番を変えたらどうなるんだろう」と思い立って、先に他の洗い物を全部済ませてから戻ってみることにしたんです。
結果、驚くくらいラクにするんと取れました。水を張ってしばらく置いておいただけなのに、こすらずスポンジでするんと剥がれる感覚。台所で「おお」と声が出たのを覚えています。
この調子で土鍋もラクにしよう——と思ったところで、手が止まりました。土鍋にだけは、これをやってはいけなかったのです。
なぜ「先にこすらない」がうまくいくのか
焦げ跡というのは、そこで調理したものが熱で鍋肌に固くこびりついた状態です。ごはんならお米のでんぷん、炒め物なら油やたんぱく質、煮物なら糖分。中身は違っても、乾いたまま力任せにこすっても落ちにくいのは共通しているそうです。逆に水にしばらく浸けておくと、こびりつきがゆっくり水分を含んでふやけて、鍋肌との結びつきがゆるんでいく。だから「置いておく時間」こそが、実は掃除の主役だったわけです。
これはフライパンでも金属のお鍋でも同じで、水に浸けておけるものなら、たいてい「待つ」のが一番ラクな方法です。
土鍋だけは、つけ置きしてはいけない
調べてみて、ひやっとしました。土鍋に水分を長く入れたままにするのは、どの土鍋でもやってはいけないことなのだそうです。土は水を吸います。入れっぱなしにすると器そのものが水を含み、底に水分がたまる。そして湿ったまま火にかけると、割れることがあると聞きました。
思い当たる人、多いのではないでしょうか。お鍋をした翌日、残った汁をそのままにしておいて、夜にうどんを入れて煮る。私もやっていました。あれを繰り返していると、土鍋には少しずつヒビが入っていくのだそうです。そして最後には水が漏れるようになって、使えなくなる。使えなくなった土鍋を見て「水を入れっぱなしにしたせいだ」と思う人は、ほとんどいません。私も、ただの寿命だと思っていました。
そして、うちの飯炊釜はとくに気をつけないといけないそうです。炊いている間かなりの高温になる釜なので、水を含んだ状態で火にかけると、ピキッといってしまうことがある。焦げを落とすつもりが釜の寿命を縮めていたかもしれないと思うと、ぞっとします。
では焦げはどうするのか。飯炊釜については、はっきり教わりました。つけ置きはせず、たわしでひたすらこする。それだけです。浸けたところで落ちるものでもないので、最初からこすったほうが早い。洗剤も特別な道具もいりません。かわりに、洗ったあとはしっかり乾かす。戸棚にしまい込まず、空気の通る場所に、できれば逆さまにして置いておく。
ちなみに、ごはんを炊くときの浸水は問題ありません。うちの釜は15分ほど浸ければちゃんと炊けますし、もっと長く浸けておきたい日は、別の容器でお米を浸けてから釜に移せばいいだけです。避けたいのは「水を入れたまま何時間も放っておくこと」のほうなんですね。
「待てば落ちる」と「待ってはいけない」。同じ焦げでも、相手が土か金属かで、やることが正反対になるんですね。
片付けの順番を変えてみる
それからは、食後の片付けの順番を少し変えるようになりました。
- まずフライパンや金属の鍋に水を張っておく
- その間に他のお皿やお箸を洗う
- 戻って、軽くスポンジでなでるだけ
- 土鍋は列に並ばせず、その場でたわし。洗ったらすぐ乾かす
たったこれだけなのですが、「一番手強そうなものを最初に片付けなきゃ」という思い込みを手放しただけで、台所仕事の体感時間がぐっと短くなりました。焦って力を入れてこすっていた時間は、実は「待てば済んだ時間」だったんだなと、ちょっとおかしくなります。
気負わずに、道具と付き合う
丁寧な暮らし、というと身構えてしまう人も多いと思うのですが、私がやっているのはこのくらいのことです。順番をひとつ変える、力を抜くタイミングを覚える。それだけで道具との付き合い方がふっと軽くなる瞬間があります。
道具にはそれぞれ、向いたやり方があるんだなと思います。待てばラクになるものもあれば、待つことがいちばんよくないものもある。土鍋は後者でした。知らないままでいたら、たぶんいつか割ってしまっていたと思います。焦げ跡ひとつでそんなことを思うなんて、我ながら大げさかもしれませんが、道具の言い分を知っておくと、台所に立つ時間が少し安心になる気がしています。
※この記事は情報提供を目的とした編集部員の体験・見解です。紹介している商品は医薬品ではなく、特定の症状の診断・治療・予防を目的としたものではありません。体調に不安のある方や通院中の方は、医師など専門家にご相談ください。
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