寝る前にケトルではなく土瓶を使ってみたら、待ち時間そのものが心地よくなった話。道具ひとつで夜の過ごし方が変わる、そんな小さな発見です。
土釜ごはんや台所道具など、毎日を少し楽しく心地よくする暮らしのヒントを届けます
電気ケトルが悪いわけじゃないけれど
うちにはずっと電気ケトルがあって、お湯なんて沸けばそれでいい、と思っていました。実際、忙しい朝はそれで十分だし、これからもお世話になると思います。ただ、夜だけは少し勝手が違うな、と感じるようになったんです。
ピッと沸いて、ピッと止まる。あの潔さが、朝は助かるのに、夜になると妙にせわしなく感じる。一日の終わりまで「早く早く」と急かされているような、そんな気がしてしまって。
土瓶を出してみた日
実家の食器棚の奥で眠っていた土瓶を、なんとなく持ち帰った日がありました。使うあてもなかったのに、形が好きで。それを夜、試しにコンロにかけてみたんです。
火にかけてから沸くまで、思っていたよりずっと時間がかかりました。最初は「遅いな」と思ったのに、湯気がゆっくり立ちのぼるのを眺めているうちに、なんだかその時間ごと悪くないな、と思えてきたんです。スマホを見る手が、自然と止まっていました。
沸いたお湯を土瓶から湯呑みに注ぐと、いつもよりゆっくりとした所作になります。急須で淹れるお茶とはまた違う、お湯そのものの静けさというか。特別なことは何もしていないのに、台所に立っている数分間が、一日のうちで一番静かな時間になりました。
「待つ」が悪者じゃない時間
日中は「待つ」がだいたい嫌なものです。信号待ち、レジの列、返信待ち。でも夜、土瓶の前で湯気を眺めているときの「待つ」だけは、なぜか嫌じゃない。むしろ、待っている間に呼吸がゆっくりになっていくのがわかります。
これは自律神経の話とつながっているのかもしれない、と後から知りました。日中は交感神経が優位になりやすく、夜になると副交感神経に切り替わっていくと言われています。せかせかした動作より、ゆったりした所作のほうが、その切り替えの助けになりやすいとも言われているようです。もちろん個人差はありますし、土瓶ひとつでどうにかなる話ではありませんが、少なくとも私にとっては「切り替えのスイッチ」のひとつになっている気がします。
気負わずに、道具をひとつ替えるだけ
丁寧な暮らし、なんて言うと少し身構えてしまいますよね。私も別に、毎晩茶道のような時間を過ごしているわけではありません。ただ、電気ケトルのボタンを押す代わりに、土瓶を火にかけてぼんやり待つ。それだけのことです。
体を締めつけるものを外したり、部屋着をゆるいものに替えたりするのと同じで、夜の道具を少し替えるだけでも、体はちゃんと「もう終わりの時間だよ」と気づいてくれるのかもしれません。姿勢や骨盤まわりの力を抜く時間と同じように、台所での数分間も、体がふっと緩む時間になり得るのだと思います。
もし家に眠っている急須や土瓶があれば、一度だけ夜に出してみてください。沸くまでの数分、案外悪くないですよ。
※この記事は情報提供を目的とした編集部員の体験・見解です。紹介している商品は医薬品ではなく、特定の症状の診断・治療・予防を目的としたものではありません。体調に不安のある方や通院中の方は、医師など専門家にご相談ください。
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