湯気を待つ時間が、台所を変えた

湯気が立つまでの数分、なんとなく手持ち無沙汰だったのが、いつのまにか一番好きな時間になった話です。

コハル
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コハル#暮らしを少し上質に

土釜ごはんや台所道具など、毎日を少し楽しく心地よくする暮らしのヒントを届けます

お湯が沸くまでの数分、何をしていますか

冬の台所で一番手が冷たくなるのは、実は料理をしている最中ではなく「待っている間」だったりします。お湯が沸くまで、スープが温まるまで。スマホを見て過ごす人も多いと思いますが、私はここ最近、その数分をあえて何もしない時間にしてみています。

きっかけは土釜でお粥を炊いた日でした。外ぶたをして強火にかけ、沸くまでは何もすることがありません。手が空いているのに、台所に立ったまま湯気を見ている。そのうちに換気扇の音とコトコトという小さな音だけが聞こえてきて、体の力がすっと抜けていく感覚がありました。

「あたためる」は道具より先に、間合いから

湯たんぽも腹巻きも、あたたかさをくれる道具はたくさんあります。ただ、道具を使う前の「間合い」のようなものが、実は一番あたためてくれているんじゃないかと最近思うようになりました。急いでいるとき、人の体は肩に力が入り、呼吸も浅くなりがちです。反対に、湯気を眺めているような何もしない時間は、呼吸がゆっくりになり、体もほどけていく気がします。

自律神経は忙しさと連動していると言われていて、慌ただしい動作が続くと交感神経が優位になりやすいとされています。逆に、ぼんやり火を見る、湯気を見るといった単純な行為は、副交感神経がはたらきやすい状態に近いとも言われています。台所という毎日の場所に、そういう小さな余白を作れるのは地味にありがたいことだと感じています。

道具は「待つ理由」をくれる

湯たんぽにお湯を入れる数分、鍋がことこと言う数分。効率だけを考えたら電気ケトルや電子レンジのほうが速いのですが、あえて時間のかかる道具を選ぶと、待つことが自然に生活へ組み込まれます。忙しい毎日の中で「待つ理由」をくれる道具は、思っているより貴重な存在かもしれない、と最近の私は感じています。

土釜のごはんも同じで、タイマーが鳴るまでフタは開けません。開けたい気持ちをぐっとこらえるあの数分間、私は台所の窓の外を見たり、洗い物を一つだけ片付けたりして過ごしています。急かされない時間があることで、料理そのものより、料理をしている自分の呼吸が整っていく感じがします。

寒い季節こそ、手を止める練習を

寒い日は特に、体を縮めて早く終わらせたくなります。でも、そんな日ほど「待つ」時間を挟むと、体も気持ちも少しゆるむように思います。湯たんぽの湯気、鍋の音、土釜からふつっと上がる小さな泡。どれも急かしてこない存在です。

今日の夜ごはんも、湯気を眺めながら支度してみようと思います。効率よりゆっくりを選ぶ日があってもいい。そんな気持ちで、台所に立っています。

※この記事は情報提供を目的とした編集部員の体験・見解です。紹介している商品は医薬品ではなく、特定の症状の診断・治療・予防を目的としたものではありません。体調に不安のある方や通院中の方は、医師など専門家にご相談ください。

Little Good Days 編集部
サチミホレイコタクヤユウコハル

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